2015年05月28日17時08分
ファイナンシャルプランナー 洞口勝人のライフプランの「!」わかった ほらっ
ファイナンシャルプランナー
洞口勝人のライフプランの「!」わかった ほらっ
世界マネーと金(ゴールド)
~ 2025年に1g=3万円!?~
マーケットが堅調なため、日本全国で資産運用セミナーが大盛況です。セミナー終了後には多くのお客様からいろいろな質問をいただきます。そんな中、最近多いのが金(GOLD)価格の見通しについてです。「個人投資家が、本格的にインフレに備えるべきだと感じ始めたんだ!」ととても嬉しいのですが、どうも金の現状についてしっかりと把握している人があまり多くないように感じます。
そこで今回は、実物資産の代表である金などの貴金属について考えてみたいと思います。
まずは、世界に存在するマネーの量について。世界の金融資産は総額でいくらあるのでしょうか? そしてそれは、毎年どのくらいのスピードで増えているのでしょう?
Q1
世界の金融資産の総額は?
(1)2 京円
(2)4 京円
(3)8 京円
(4)16 京円
Q2
世界の金融資産は年率何%で増えているの?
(1)3%
(2)7%
(3)12%
(4)20%
IMF(国際通貨基金)の推計によりますと、世界の金融資産残高は、2013年末時点で約3京円( 283 兆ドル、1ドル=105・25円換算)となっています。また、【図1】グラフからも分かりますように、世界の金融資産はおおよそ10年で2倍のペースで増加しています。これは年率7%で増えていることを意味します《問2の正解は(2)番》。そこから2015 年5月現在における世界の金融資産の総額を推計しますと約316 兆ドル。1ドル=120 円として約3京8000 兆円です《問1の正解は一番近い(2)番》。
ちなみに、世界人口は現在約73億人ですが、年間8000 万人のペースで増えていますので増加率は約1%。世界全体のGDPは、ここのところ平均的に3・5%前後の伸びです。世界マネーはGDPの2倍のスピードで増えているんですね。次に金の時価総額について考えてみましょう。またそれは、世界の金融資産に対して何%にあたるのでしょうか?
Q3
金の時価総額は?
(1)800 兆円
(2)1600 兆円
(3)3200 兆円
(4)6400 兆円
Q4
金と世界の金融資産の比は?
(1)2 : 100
(2)4 : 100
(3)8 : 100
(4)16 : 100
有史以来掘り出された金の総量は、オリンピックプール3杯半といわれる17万7000 トン。1g=4500円としますと約800 兆円となります《問3の正解は(1)番》。これは世界の金融資産のわずか2%ほどにしかなりません《問4の正解は(1)番》。なんだかずいぶんと少ないような気がします。【図2】
2011 年末当時、金価格は現在とほとんど同じ4000 円台でした。一方で同じ時期の世界の金融資産はおおよそ2京円。世界の金融資産が4年で2倍になったにもかかわらず、金価格は据え置き。現在は、中国や欧州などの景気の悪化や今後の米国の利上げが予想されていることもあり、実物資産の代表である金が「過小評価」されているのではないかと考えられるのです。
ところで、日本人は現在どのくらいの金を保有しているのでしょうか? 新聞・雑誌・ネット上にはここのところの金価格上昇もあって、「貴金属を買い取ります」という広告がたくさん掲載されています。
読者のみなさんも長年保有した貴金属やジュエリーの買い取りを利用されている方が結構いらっしゃると思います。では、日本人は約1700 兆円の金融資産に対して、どのくらいの金を保有しているのでしょうか?
Q5
日本人は約1700兆円の金融資産に対して何%の金を保有しているの?
(1)1%未満
(2)5%
(3)10%
(4)20%
日本の個人が保有する金は約2500トンといわれていますから約11兆円。個人金融資産総額が2014年12月末現在で1694 兆円。つまり、マネーに対してわずか0・6%ほどにしかならないのです《正解は(1)番》。これではインフレ&円安に備えていることにはなりません。さらには買い取りなどを利用して金の保有を減らしている人が多いのが現状です。
欧州では歴史上戦禍が続いたこともあり、いつでも持ち運びできるように資産の10%程度を金にするべきだと考えられてきました。ぜひ、日本の個人投資家も、金融資産の10%は金などの実物資産を持ってインフレや円安に備えていただければと思います。
そんな中、2015 年3月に興味深い予測が発表されました。米証券会社最大手ゴールドマン・サックス(GS)が、金の産出量の予測を発表したのです。この中でGSは、採掘可能な金が何年後に枯渇すると予想しているのでしょうか?
Q6
GSが予想する金の枯渇は何年後?
(1)10 年後
(2)20 年後
(3)40 年後
(4)80 年後
正解は、(2)番の20年後でした。GSは「鉱山の生産量が2015 年をピークとして減少し、採掘可能な金は20年後に枯渇する」と予想しています。現在年間約3000 トンの金が産出されていますが、今後20年間で数万トンの金が採掘された後、金の地上在庫は基本的に増えないということを今回の発表は意味しているのです。
歴史的に金を好む、40億人を超えるアジアの人々がここからどんどん裕福になる一方で、金の産出量が減少します。需給関係を考えた場合、今回の予測は明らかに金価格が上昇トレンドにあることを示唆しているのではないでしょうか。
それでは最後に金以外の貴金属についても考えてみましょう。金に対して銀の価格はどのくらいなのでしょうか? また現在その差は拡大しているのでしょうか? 縮小しているのでしょうか?
Q7
銀と金の価格差は?
(1)1 : 25
(2)1 : 50
(3)1 : 75
(4)1 : 100
現在の銀価格は1g= 60円ほどです。ということは60円:4500 円=1:75ということになります《正解は(3)番》。しかし、2011 年4月にはその比が130 円:3900 円=1:30となっていたのです。
銀は貴金属ではありますが、その特性を活かして太陽光発電など工業用として利用されています。2011 年はリーマンショック後の景気刺激策などが重なり、世界景気が良い時期でした。そのため、工業用に利用される銀の価格が大幅に上昇したのです。つまり、現在の銀価格は、金以上に「過小評価」されているということを意味しているのです(プラチナも銀と同様)。【図3】
年間7%で増え続ける世界マネーは、基本的には今後も10年間で2倍になると思われます。一方で金の採掘量は限界が見えてきました。
10年後の2025 年に
(1)世界の金融資産が8京円
(2)(前号でお伝えしましたように)為替は1ドル=250円
(3)金が「過小評価」(世界マネーの2%)から「過大評価」(世界マネーの4%)へ
(4)購買力が大幅に増加したアジア40億人強が金をどんどん購入する
と仮定しますと、サブタイトルにもあるような1g=3万円というのもあながち絵空事ではないような気がします。
金・銀・プラチナの保有方法には、
(1)1㎏などのバー(延べ棒)
(2)コイン
(3)純金積立て
(4)ETF(上場投資信託)
などが一般的です。
インフレ&円安時に価格上昇が見込める貴金属を、金融資産の10%程度お持ちいただくことを、ぜひお勧めしたいと思います。
洞口 勝人(ほらぐち かつひと)
ファイナンシャルプランナー(CFPR 日本FP 協会認定)。1963 年、岐阜県生まれ。1986 年早稲田大学教育学部卒業後、日興證券入社。2002 年日興コーディアル証券退職と同時にFP として独立。現在は、全国の金融機関等の研修講師を務める一方、金融・経済・投資に関するセミナー・講演会を年間約200 回(参加者数約2 万人)行っている。
洞口勝人のライフプランの「!」わかった ほらっ
世界マネーと金(ゴールド)
~ 2025年に1g=3万円!?~
マーケットが堅調なため、日本全国で資産運用セミナーが大盛況です。セミナー終了後には多くのお客様からいろいろな質問をいただきます。そんな中、最近多いのが金(GOLD)価格の見通しについてです。「個人投資家が、本格的にインフレに備えるべきだと感じ始めたんだ!」ととても嬉しいのですが、どうも金の現状についてしっかりと把握している人があまり多くないように感じます。
そこで今回は、実物資産の代表である金などの貴金属について考えてみたいと思います。
まずは、世界に存在するマネーの量について。世界の金融資産は総額でいくらあるのでしょうか? そしてそれは、毎年どのくらいのスピードで増えているのでしょう?
Q1
世界の金融資産の総額は?
(1)2 京円
(2)4 京円
(3)8 京円
(4)16 京円
Q2
世界の金融資産は年率何%で増えているの?
(1)3%
(2)7%
(3)12%
(4)20%
IMF(国際通貨基金)の推計によりますと、世界の金融資産残高は、2013年末時点で約3京円( 283 兆ドル、1ドル=105・25円換算)となっています。また、【図1】グラフからも分かりますように、世界の金融資産はおおよそ10年で2倍のペースで増加しています。これは年率7%で増えていることを意味します《問2の正解は(2)番》。そこから2015 年5月現在における世界の金融資産の総額を推計しますと約316 兆ドル。1ドル=120 円として約3京8000 兆円です《問1の正解は一番近い(2)番》。
ちなみに、世界人口は現在約73億人ですが、年間8000 万人のペースで増えていますので増加率は約1%。世界全体のGDPは、ここのところ平均的に3・5%前後の伸びです。世界マネーはGDPの2倍のスピードで増えているんですね。次に金の時価総額について考えてみましょう。またそれは、世界の金融資産に対して何%にあたるのでしょうか?
Q3
金の時価総額は?
(1)800 兆円
(2)1600 兆円
(3)3200 兆円
(4)6400 兆円
Q4
金と世界の金融資産の比は?
(1)2 : 100
(2)4 : 100
(3)8 : 100
(4)16 : 100
有史以来掘り出された金の総量は、オリンピックプール3杯半といわれる17万7000 トン。1g=4500円としますと約800 兆円となります《問3の正解は(1)番》。これは世界の金融資産のわずか2%ほどにしかなりません《問4の正解は(1)番》。なんだかずいぶんと少ないような気がします。【図2】
2011 年末当時、金価格は現在とほとんど同じ4000 円台でした。一方で同じ時期の世界の金融資産はおおよそ2京円。世界の金融資産が4年で2倍になったにもかかわらず、金価格は据え置き。現在は、中国や欧州などの景気の悪化や今後の米国の利上げが予想されていることもあり、実物資産の代表である金が「過小評価」されているのではないかと考えられるのです。
ところで、日本人は現在どのくらいの金を保有しているのでしょうか? 新聞・雑誌・ネット上にはここのところの金価格上昇もあって、「貴金属を買い取ります」という広告がたくさん掲載されています。
読者のみなさんも長年保有した貴金属やジュエリーの買い取りを利用されている方が結構いらっしゃると思います。では、日本人は約1700 兆円の金融資産に対して、どのくらいの金を保有しているのでしょうか?
Q5
日本人は約1700兆円の金融資産に対して何%の金を保有しているの?
(1)1%未満
(2)5%
(3)10%
(4)20%
日本の個人が保有する金は約2500トンといわれていますから約11兆円。個人金融資産総額が2014年12月末現在で1694 兆円。つまり、マネーに対してわずか0・6%ほどにしかならないのです《正解は(1)番》。これではインフレ&円安に備えていることにはなりません。さらには買い取りなどを利用して金の保有を減らしている人が多いのが現状です。
欧州では歴史上戦禍が続いたこともあり、いつでも持ち運びできるように資産の10%程度を金にするべきだと考えられてきました。ぜひ、日本の個人投資家も、金融資産の10%は金などの実物資産を持ってインフレや円安に備えていただければと思います。
そんな中、2015 年3月に興味深い予測が発表されました。米証券会社最大手ゴールドマン・サックス(GS)が、金の産出量の予測を発表したのです。この中でGSは、採掘可能な金が何年後に枯渇すると予想しているのでしょうか?
Q6
GSが予想する金の枯渇は何年後?
(1)10 年後
(2)20 年後
(3)40 年後
(4)80 年後
正解は、(2)番の20年後でした。GSは「鉱山の生産量が2015 年をピークとして減少し、採掘可能な金は20年後に枯渇する」と予想しています。現在年間約3000 トンの金が産出されていますが、今後20年間で数万トンの金が採掘された後、金の地上在庫は基本的に増えないということを今回の発表は意味しているのです。
歴史的に金を好む、40億人を超えるアジアの人々がここからどんどん裕福になる一方で、金の産出量が減少します。需給関係を考えた場合、今回の予測は明らかに金価格が上昇トレンドにあることを示唆しているのではないでしょうか。
それでは最後に金以外の貴金属についても考えてみましょう。金に対して銀の価格はどのくらいなのでしょうか? また現在その差は拡大しているのでしょうか? 縮小しているのでしょうか?
Q7
銀と金の価格差は?
(1)1 : 25
(2)1 : 50
(3)1 : 75
(4)1 : 100
現在の銀価格は1g= 60円ほどです。ということは60円:4500 円=1:75ということになります《正解は(3)番》。しかし、2011 年4月にはその比が130 円:3900 円=1:30となっていたのです。
銀は貴金属ではありますが、その特性を活かして太陽光発電など工業用として利用されています。2011 年はリーマンショック後の景気刺激策などが重なり、世界景気が良い時期でした。そのため、工業用に利用される銀の価格が大幅に上昇したのです。つまり、現在の銀価格は、金以上に「過小評価」されているということを意味しているのです(プラチナも銀と同様)。【図3】
年間7%で増え続ける世界マネーは、基本的には今後も10年間で2倍になると思われます。一方で金の採掘量は限界が見えてきました。
10年後の2025 年に
(1)世界の金融資産が8京円
(2)(前号でお伝えしましたように)為替は1ドル=250円
(3)金が「過小評価」(世界マネーの2%)から「過大評価」(世界マネーの4%)へ
(4)購買力が大幅に増加したアジア40億人強が金をどんどん購入する
と仮定しますと、サブタイトルにもあるような1g=3万円というのもあながち絵空事ではないような気がします。
金・銀・プラチナの保有方法には、
(1)1㎏などのバー(延べ棒)
(2)コイン
(3)純金積立て
(4)ETF(上場投資信託)
などが一般的です。
インフレ&円安時に価格上昇が見込める貴金属を、金融資産の10%程度お持ちいただくことを、ぜひお勧めしたいと思います。
洞口 勝人(ほらぐち かつひと)
ファイナンシャルプランナー(CFPR 日本FP 協会認定)。1963 年、岐阜県生まれ。1986 年早稲田大学教育学部卒業後、日興證券入社。2002 年日興コーディアル証券退職と同時にFP として独立。現在は、全国の金融機関等の研修講師を務める一方、金融・経済・投資に関するセミナー・講演会を年間約200 回(参加者数約2 万人)行っている。
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- 5L編集部
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