名古屋市長に市の魅力やまちづくりのビジョンをお伺いしました。
名古屋市長
河村 たかし
名古屋市
【面積】326.44 平方km 【人口】2,281,576 人 【世帯数】1,055,779 世帯
減税で、より良い公共サービスをより安く提供する
私が一番お伝えしたいことは、政治をする者は自ら質素にして税金を1円でも減らしてみせよう、ということなんです。2009年に名古屋市長に就任した時に、市長の給与を3分の2、4年ごとに支払われる退職金もカットしました。今や日本の県庁所在地の市長の中では、私の給料が一番安いですよ（笑）。結果、4年間で1億2000万円を市民にお返しすることができました。大変なことなのに、誰も褒めてくれんの。なぜ、「あぁ立派な市長だ」とならんのですかね。
同時に、職員の人件費も、1割をカットしました。職員は約2万6000人いるので、その人数分だけカットした合計は180億円になります。うち、110億円を減税の原資にあて、110億円の減税というと、名古屋市は現在100万世帯ありますので、1世帯あたり1万1000円ずつの減税をすることができました。
残り70億円は福祉にあてました。がん検診（胃・大腸・子宮・乳・肺・前立腺）の自己負担額を500円に統一しましたし、中学生までは医療費タダ。保育園の数も増やして、全国的な問題となっている待機児童の数をゼロにしました。現在、2014年度から2年連続でのゼロを実現しており、これは大都市においては日本初の記録です。市営地下鉄や市バスに乗り放題の敬老パスの値上げもストップしました。私は、名古屋は日本一の福祉の街だと思いますね。
なぜ減税にこだわるのかというと、私は政治家になる前、家業を継いで働いていたので、零細企業のすさまじい価格競争を目の当たりにしてきたからなんです。価格を下げれば当然その分需要が増えるわけですから、みんなどんどん価格を下げるわけです。需要が増えれば、経済全体がアップする。スーパーでもラーメン屋さんでもやっていることなのに、役所はいわば独占企業みたいなものですから、胡座をかいていたんだと思います。おかしな話ですよね、税金を払う方は苦労しとるのに、税金で食っとる方は楽しとるなんて。本来なら、役所こそが率先して、より良い公共サービスをより安く提供するための努力をしていくべきなんだと思います。
福祉政策のなかで最近のヒット作を挙げるなら、「なごや子ども応援委員会」を、昨年4月から市内の11の中学校に設置したことです。各子ども応援委員会に常勤のスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、スクールアドバイザーと非常勤の警察ＯBを配置しました。これまで日本では、苦しんでいる子どもからの相談を受けるのが、スクールカウンセラーの役割でした。「なごや子ども応援委員会」では、これを予防的にやるわけです。たとえば数学の先生が「あの子、最近ちょっと元気ないな」と感じたら、子ども応援委員会の専門家に相談して、子どもが抱える悩みや問題、いじめに積極的にアプローチして問題を未然に防止したり、あるいは早期発見に取り組んでいくのです。今までは担任や教科の先生が子どもの相談にのっていたわけですが、教科とは関係なく常勤のカウンセリングの専門家への相談体制を設けたことが、これまでとの違いです。これは日本では初の試み。2013年に名古屋市の姉妹都市であるアメリカ・ロサンゼルス市で、現地のスクールカウンセラー制度を視察したことを契機に取り組み始めました。1年間で、この相談が2695件も集まりました。子どもの数でいうと523人からの相談がありました。ものすごい数ですよ。
減税も、福祉政策も、とても単純なことなのに、どうして他の都市に広がらないのか不思議で仕方なりません。
名古屋市で由緒ある観光資源といえば、1900年の歴史をもつ熱田神宮がありますね。しかし、名古屋は第二次世界大戦中の名古屋大空襲で全部燃えてまったんです。このときに400年の歴史がある名古屋城まで焼失して、名古屋に対する価値観は残念ながら喪失しました。昨年11月には、江戸後期から明治の間に建築された木造の建物の鳥料理屋「鳥久」まで火事で燃えてしまいました。
名古屋城についていえば、戦前は国宝第1号でした。それを大戦で焼失してしまったのは本当に残念なこと。今後、天守閣を復元して、一つでも街のシンボルを作るべく取り組みをしています。
「青年都市」というキャッチフレーズで街づくりをしてきたんですけど、名古屋には街の雰囲気というものが感じにくいですからね……。大阪には藤島桓夫の「月の法善寺横丁」や、都はるみ・岡千秋の「浪花恋しぐれ」があるし、東京だったら、牧村旬子・石原裕次郎の「銀座の恋の物語」。名古屋にも、一応、石原裕次郎の「白い街」という歌があるんですけど、ヒット曲にはならなかったようです。もっと風景が歌われるような街にしていきたいですね。実はもう詩も練っとるんです。これで紅白歌合戦出場でも目指しますかね。
意外と知らない「名古屋」に本社がある企業
順不同
●カゴメ株式会社（大手食品メーカー）
●日本ガイシ株式会社（がいしなど電力関連機器、特殊金属製品の製造・販売）
●株式会社ノリタケカンパニーリミテド（高級陶磁器メーカー）
●ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社（缶コーヒーPOKKAでおなじみ）
●株式会社ヴィレッジヴァンガードコーポレーション（複合型書店）
●ブラザー工業株式会社（プリンター、FAX、ミシンなどの製造）
●リンナイ株式会社（ガスコンロ、給湯器などの製造）
●株式会社パロマ（ガスコンロ、給湯器などの製造）
●株式会社メニコン（コンタクトレンズメーカー）
●株式会社ゲオ（レンタルビデオ、CD・DVD・ゲームの販売）
●株式会社アルペン（スポーツ用品の販売）
●株式会社コメ兵（中古品及び新品の宝石、貴金属、時計、バッグなどの仕入・販売）
●株式会社木曽路（しゃぶしゃぶ・日本料理などの飲食事業）
●川上産業株式会社（プチプチを売り出した日本初の企業、業界シェアは50%）
●シヤチハタ株式会社（印章、スタンプ、文房具などの製造）
●日本車輌製造株式会社（鉄道車両、建設機械などの製造）
●リゾートトラスト株式会社（会員制リゾートホテル「エクシブ」などを運営）
