2015年10月21日10時00分
にっぽん日和 大阪 岸和田市
約300年の歴史を誇る岸和田だんじり祭。高さ約4メートル、重さ約4トンのだんじりを数百人で曳き、全速力で角を直角に曲がる「やりまわし」は圧巻です。
カメラ/渡邊春信 ライター/吉田彩乃 デザイン/北川原由貴 プロダクションマネージャー/池田大作 スペシャルサンクス/岸和田市
「だんじり」を中心に
すべてがまわっている町
毎年9月に行われる岸和田のだんじり祭。岸和田の人々は仕事や学校を休み、他府県に住む人も必ず帰省して、祭りに参加すると言われています。岸和田に生まれたら「一生ここを離れない」という人もいますし、「結婚相手は、岸和田の男以外考えられない」という女性もいます。岸和田のだんじりが熱く激しいのも、町の人たちや曳き手たちのだんじりにかける想いの熱さを投影しているのかもしれません。
だんじりが祭りの2日間で駆け抜ける距離は、フルマラソンとほぼ同じだといわれています。岸和田の町並みで特徴的なのは、だんじりが通る道路に面した建物には、2階に大きなベランダや窓があり、いわば、だんじりを観るための特等席として設えられていることです。
だんじりは400人~1000人もの大人数で曳きます。いくつかの役割に分かれていて、年齢や経験にあわせてそれぞれの役につきます。祭りのメインは、高さ約4メートル、重さ約4トンものだんじりが、勢いをつけて見事にカーブを回る「やりまわし」。それぞれのパートの曳き手たちが呼吸を合わせ、絶妙なタイミングとバランスでだんじりを維持しなければ、遠心力で倒れてしまうかもしれないからです。実にスリリングなシーンです。
伝える、作る、愛する。
だんじりに関わる人々。
だんじりは、曳く人々だけが主役ではありません。
だんじりの歴史を伝える人々、だんじりや飾り、衣裳を作る人々、
だんじりを見るために集まる人々……。
その全てがだんじりを支えています。
高さ約4メートル、重さ約4トンもの巨大なだんじりですが、近づいて見てみると、花や鳥、真田幸村などの武将たちが、実に緻密で精巧に彫られている芸術品であることがわかります。町のいわれなどに合わせて作られるため、ひとつとして同じものはありません。祭りでは勢い良く曳かれるため、彫刻部分が破損しないように金網がかけられ、雨の日にはビニールのカバーがかけられて丁寧に保護されながら、100年以上使われます。
木下彫刻工芸は、岸和田にいくつもある彫刻工房の総本家。80年以上の伝統を受け継ぎ、柔らかい表情の彫刻をすることで有名です。先代親方の木下賢治さんは、中学卒業とともにこの世界に弟子入り。半世紀以上にわたり、親方を引退したいまも、彫刻を続けています。だんじりを彫ることに憧れる若者が絶えず弟子入りし、伝統が脈々と受け継がれています。
岸和田市役所
観光課長の西川正宏さん
NHK連続テレビ小説「カーネーション」のモデルにもなった、デザイナーの小篠綾子さん。1934年、実家の呉服店を「コシノ洋裁店」に変えたのは有名な話です。1台のシンガーミシンから数々の洋服が紡ぎ出されたこの場所は、いまもコシノギャラリーとして残されています。
岸和田駅前通商店街のほぼ中央に位置するこのギャラリーの2階ベランダは、実は絶好のだんじり見物スポット。手で触れられるくらいの距離を、だんじりが駆け抜けていきます。綾子さんの娘で、世界的に活躍するコシノ三姉妹(ヒロコさん、ジュンコさん、ミチコさん)も、毎年祭りになると生家であるこの場所に帰ってきて、揃ってだんじりに興じるとのこと。
岸和田で愛され続ける味
城下町ならではの銘菓と、町の人々に親しまれてきた
地元料理。素朴で親しみのわく味わいが特徴です。
■JALでいく
朝5時に起きて、7時15分発の羽田発JAL便で関空へ。やや荒れ模様の天候とあって、連絡橋から角立つ波を見下ろしながら、目的地・岸和田へと向かった。ちょうどこの日が試験曳きとあって、町はだんじり一色。威勢のいい人たちのお話を伺ううちに、昼食のタイミングを逃してしまった。「小腹が減ったな」と思っているところに、飛び込んできたのが「かしみん焼き」の看板。小麦粉の生地に、刻みキャベツと鶏肉や牛脂のミンチをのせて焼く、岸和田の名物食である。吸い寄せられるかのように店に入って「かしみん焼き」ばかりか、「玉子のから焼き」までたいらげた。このソウルフード2品に、おかみさんの笑顔まで加えて、650円とは安すぎる。店の名前は「鳥美」さん。以降の取材に勢みがついたのは言うまでもない。
木村政雄
カメラ/渡邊春信 ライター/吉田彩乃 デザイン/北川原由貴 プロダクションマネージャー/池田大作 スペシャルサンクス/岸和田市
「だんじり」を中心に
すべてがまわっている町
毎年9月に行われる岸和田のだんじり祭。岸和田の人々は仕事や学校を休み、他府県に住む人も必ず帰省して、祭りに参加すると言われています。岸和田に生まれたら「一生ここを離れない」という人もいますし、「結婚相手は、岸和田の男以外考えられない」という女性もいます。岸和田のだんじりが熱く激しいのも、町の人たちや曳き手たちのだんじりにかける想いの熱さを投影しているのかもしれません。
だんじりが祭りの2日間で駆け抜ける距離は、フルマラソンとほぼ同じだといわれています。岸和田の町並みで特徴的なのは、だんじりが通る道路に面した建物には、2階に大きなベランダや窓があり、いわば、だんじりを観るための特等席として設えられていることです。
だんじりは400人~1000人もの大人数で曳きます。いくつかの役割に分かれていて、年齢や経験にあわせてそれぞれの役につきます。祭りのメインは、高さ約4メートル、重さ約4トンものだんじりが、勢いをつけて見事にカーブを回る「やりまわし」。それぞれのパートの曳き手たちが呼吸を合わせ、絶妙なタイミングとバランスでだんじりを維持しなければ、遠心力で倒れてしまうかもしれないからです。実にスリリングなシーンです。
伝える、作る、愛する。
だんじりに関わる人々。
だんじりは、曳く人々だけが主役ではありません。
だんじりの歴史を伝える人々、だんじりや飾り、衣裳を作る人々、
だんじりを見るために集まる人々……。
その全てがだんじりを支えています。
高さ約4メートル、重さ約4トンもの巨大なだんじりですが、近づいて見てみると、花や鳥、真田幸村などの武将たちが、実に緻密で精巧に彫られている芸術品であることがわかります。町のいわれなどに合わせて作られるため、ひとつとして同じものはありません。祭りでは勢い良く曳かれるため、彫刻部分が破損しないように金網がかけられ、雨の日にはビニールのカバーがかけられて丁寧に保護されながら、100年以上使われます。
木下彫刻工芸は、岸和田にいくつもある彫刻工房の総本家。80年以上の伝統を受け継ぎ、柔らかい表情の彫刻をすることで有名です。先代親方の木下賢治さんは、中学卒業とともにこの世界に弟子入り。半世紀以上にわたり、親方を引退したいまも、彫刻を続けています。だんじりを彫ることに憧れる若者が絶えず弟子入りし、伝統が脈々と受け継がれています。
岸和田市役所
観光課長の西川正宏さん
NHK連続テレビ小説「カーネーション」のモデルにもなった、デザイナーの小篠綾子さん。1934年、実家の呉服店を「コシノ洋裁店」に変えたのは有名な話です。1台のシンガーミシンから数々の洋服が紡ぎ出されたこの場所は、いまもコシノギャラリーとして残されています。
岸和田駅前通商店街のほぼ中央に位置するこのギャラリーの2階ベランダは、実は絶好のだんじり見物スポット。手で触れられるくらいの距離を、だんじりが駆け抜けていきます。綾子さんの娘で、世界的に活躍するコシノ三姉妹(ヒロコさん、ジュンコさん、ミチコさん)も、毎年祭りになると生家であるこの場所に帰ってきて、揃ってだんじりに興じるとのこと。
岸和田で愛され続ける味
城下町ならではの銘菓と、町の人々に親しまれてきた
地元料理。素朴で親しみのわく味わいが特徴です。
■JALでいく
朝5時に起きて、7時15分発の羽田発JAL便で関空へ。やや荒れ模様の天候とあって、連絡橋から角立つ波を見下ろしながら、目的地・岸和田へと向かった。ちょうどこの日が試験曳きとあって、町はだんじり一色。威勢のいい人たちのお話を伺ううちに、昼食のタイミングを逃してしまった。「小腹が減ったな」と思っているところに、飛び込んできたのが「かしみん焼き」の看板。小麦粉の生地に、刻みキャベツと鶏肉や牛脂のミンチをのせて焼く、岸和田の名物食である。吸い寄せられるかのように店に入って「かしみん焼き」ばかりか、「玉子のから焼き」までたいらげた。このソウルフード2品に、おかみさんの笑顔まで加えて、650円とは安すぎる。店の名前は「鳥美」さん。以降の取材に勢みがついたのは言うまでもない。
木村政雄
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- 5L編集部
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