つい５・６日前のことである。好きな時代劇を観終えて歯を磨くため洗面所へ行くと、聞くともなしに隣家の奥さんの声が耳に入ってきた。「あんた、あの時○○って言っただろ！」酒が入っているのか、外で見かける楚々とした風情とは打って変わって、べらんめえ調でまくしたてている。その後小声で言い訳する旦那を散々罵った挙句、ガチャーンと何かの割れる音が・・・。しばし静寂の後、ようやく聞き取れたのは「暴力は辞めろよ」という弱々しい旦那の声だった。

　翌日から見かけるのは、慣れぬ手つきでゴミ出しや掃除をする旦那のみ。飼い犬ともども奥さんもいなくなったらしい。そんな話を妻と交わしながら新聞を読んでいると、「４年前と比べて７．５倍増えている、妻からＤＶ被害を受ける夫」という記事が。ＤＶは女性が受けるものと思っていたが、どうやらその概念は覆りつつあるらしい。男性が被害者となる率はまだ１０％とはいえ、誰にも言えず１人で抱え込んでいる潜在的な被害者まで入れるとかなり多いと推測されるからだ。「ああ怖い世の中になったものだ」。隣家を他山の石として、安倍さんのように我が家でも「積極的平和外交」をして「戦略的互恵関係」の構築に鋭意努めなければ！